研究と実験の違いを知ろう!大学院に進学する前に考えておくべき大事なこと

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どーも!某 (@7254bou)です!

大学院進学を考えている人に考えてほしいことの一つとして「研究と実験の違い」というものがあります。

「そんなの分かってるよ!」と思う人がほとんどだと思いますが、意外と深く考えたことない人もいるかも知れません。

今回は私が考える「研究」と「実験」の違いについて書きます。

「研究」と「実験」の定義を確認

さて、研究と実験は字も違うので当たり前ですが違う言葉です。

まずそれぞれの定義について整理してみましょう。

「研究」の定義

[名](スル)物事を詳しく調べたり、深く考えたりして、事実や真理などを明らかにすること。また、その内容。

コトバンク

この「研究」の定義を見ると分かると思いますが、「何かをして真理などを明らかにする」のが研究ということになります。

だから必ずしも実験をしなくてもいいんですね。

例えば、文学で言えば特定ジャンルの書物を複数読んで比較する「比較研究」などがあります。

これは何か実験をするわけでは無く、知られている本を読み比べて考察して初めて分かる事実や考え方を明らかにする研究でもあります。皆が気づいていなければ新規の発見や真理ともいえる訳ですね。

もちろん特定の条件に絞って比較すること自体を「実験」という言い方もできますが、一般的には比較は「研究」という文脈が使われることが多いです。

「実験」の定義

事物をあるがままに観察するのではなく,人工的に制御された一定条件下で選択され用意された対象に起る現象を観察あるいは測定すること。

コトバンク

「実験」の定義をまとめると、「実験は何か制限された条件のもとで観察を行うこと」になります。

例えば、サントリーの炭酸水を呑んでいて、前に飲んだアサヒの方が炭酸の方が強いと感じたとしましょう。

しかしそれは開けてから飲む時間が長かったかも知れませんし、その前に食べていたチョコレートのせいで感覚が麻痺していたかも知れません。

この状態では本当に炭酸を強く感じたか分からないわけです。これは自然の状態で感じたことなので、実験とは呼べません。

そこで、サントリーの炭酸水とアサヒの炭酸水を両方持ってきて、同時かつ食べ物を食べていない条件下で比較するわけです。これが実験です。

それを試して初めて「僕はサントリーよりアサヒの炭酸水の方が炭酸を強く感じた」という結果になるわけです。

もちろんこれは科学実験と呼ぶには曖昧さが残るものですが、何かを飲んだりして比較するのは「官能試験」と呼ばれる立派な試験方法でもあります。(もし本格的にサイエンスにするなら複数人で調べたり、より特定の条件で調べたりする必要がありますけどね)

今の例から分かる通り、実験とは「特別な条件を用意して試してみること」とも言えますね。

「研究」と「実験」の違い

さて、それぞれ「研究」と「実験」の定義については分かったと思いますが、違いは何でしょうか?

実は「研究」の中に含まれるものが「実験」なのです。

先ほど必ずしも「研究」をするのに「実験」は必要ないと書きましたが、「実験」をする場合の「研究」は、研究テーマの発案、すなわち仮説の考案からスタートします。仮説は色々な知見を調べて現状考えられることです。

そして仮説が本当かどうかを調べるために「実験」をします。

ですので仮説や目的の設定は「実験」には含まれないのです。

要するに研究という大枠の中に「実験」が含まれるわけです。

典型的な理学系論文の構成で言えば、論文は「背景・目的・方法・結果・考察・結論」のような形に分けられます。

研究背景を述べて、その中から見えてきた目的(仮説)を設定し、そしてそれを調べるための方法を記し、実験をした結果を載せ、考察し、結論を出すという流れになります。

この場合実験は方法・結果と呼ばれる部分になります。

他の人の考え方も見てみよう

研究と実験の違いについて軽くwebで調べてみると、こういう風にとらえている人もいるみたいですね。

おそらくこのツイートは研究者として仕事をするために必要なことという文脈で書かれたものだと思うので、今回の記事とは少しニュアンスが違うかもしれません。しかしながら同様に「実験」と「研究」を分けて考えていますね。

このツイートでは、マネジメントや共同研究の交渉力、予算の獲得、論文書きについて言及されています。確かにそれも重要です。

しかしそれは研究者として仕事をするのに必要なものであって、研究するのに必要な力とは違うものだと思います。

別に仕事じゃなくても趣味でも研究はできますからね。

したがって研究と言うのは論文を書くのに必要な「背景・目的・方法・結果・考察・結論」を行う力のことを言うと考えています。

さらに狭義にしてあえて実験を除くと、「背景・目的・考察・結論」を行う力とも言えます。

従って研究する力を簡単に一言で言うなら、「考える力」というのが一番分かりやすい研究力になると思います。

例えば、 一般社団法人教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授は「考える」こととはこのようなプロセスだと述べています。

「自分の言葉で語れること(What)」「疑問に思うこと(Why)」「手段や方法を思いつくこと(How)」のいずれかのことをしているときに、「考えている」という状態になる

東洋経済 ONLINE

「自分の言葉で語れること(What)」というのは研究背景の部分ですね。もちろん詳しく知らないなら調べる力も必要です。

次に「疑問に思うこと(Why)」は研究目的のために必要な力です。何も疑問に思わないと仮説が立てれませんし、研究が失敗したときにも困ります。

そして「手段や方法を思いつくこと(How)」は実験手法を考える力になります。

人が何かを考えるということと研究をすることはある種同じことなんですね。

研究と実験の違いを知っておく意味

さて研究と実験の違いはなんとなく分かってきたと思いますが、何で大学院に進学する前にこんなことを意識しておく必要があるんでしょうか。

それは大学院で研究するのに自分が向いているか考える必要があるからです。

私が博士課程にいたころ、「自分は研究が好きだから」という理由で進学する後輩を何人も見てきました。

ただ、その子たちを見ていると本当に研究が好きそうな子とそうじゃない子がいるなと思っていました。

その理由を考えてみると、それは「実験」だけが好きな子と、「実験」以外の「研究」も好きな子に分かれているからだと感じたのです。

学部生の頃は「研究」とはいいながらも、ほとんど決められたテーマをやる研究室が多いと思います。それって「研究」と言いながらもほとんど「実験」のみになっているんですよね。

なので「研究」=「実験」と勘違いして進学してしまう。

ところが大学院、特に博士課程まで来るとテーマを自分で考えて、うまくいかなければそれを自分で修正してなど「実験」以外の部分が重要になってきます。主体的に動かなければだめですし、教員からもそこまで助けてはもらえません(まぁ研究室の教育方針によりますが...実験だけさせて出れてしまうところもあるので)。

「実験」しか好きじゃない人は嫌になっちゃうのかなと思います。自分で疑問を持ち、調べて、実験方法を考えて、考察して...などこれらのプロセスがあまり好きでない人もいます。

だからこそ進学する前に自分が好きなことは「実験」だけなのかそれ以外の「研究」も好きなのか考えてほしいなと思います。

もちろんこれはあくまで私の主観に基づいた考えです。他の人にとっては全く違うことかもしれません。

しかし、大学院に進学する前に自分がやろうとしていることについて深く理解しておくことは大事だと思います。